Thermal Treatment of E+E Waste Plastics
paper published in
Waste Management & Research
18 (2000) 131 - 140
J. Vehlow, B. Bergfeldt, K. Jay, H. Seifert, T. Wanke,
F.E. Mark*
Forschungszentrum Karlsruhe GmbH
Institute for Technical Chemistry
Karlsruhe, Germany
* Dow Europe, Horgen, Switzerland

J. Vehlow, B. Bergfeldt, K. Jay, H. Seifert, T. Wanke, F.E. Mark: E+Eプラスティック廃棄物の熱処理Waste Management & Research, 18 (2000) pp. 131 - 140

要約
同時燃焼試験で最大12重量%の種々の電気電子(E+E)プラスティック廃棄物が試験用焼却炉内の処理済み都市固形廃棄物(MSW:municipal solid waste)に追加された。発熱量が増加し、底の灰の燃え尽きが良くなった。生ガス内のポリ塩化ジベンゾPダイオキシンおよびジベンゾフランのレベルは、同時燃焼で大きく変化することはなかった。臭素(Br)の量が多くても生ガス内の臭素含有ダイオキシンおよびフランの濃度は限られ、排出物質の質を低下させることはない。したがって、一定の限られたE+E廃棄物に対してMSW焼却は有利な処分方法である。金属成分は、焼却の前に慎重に分離しなければならない。

キーワード
E+E廃棄プラスティック、難燃性ブラスチック、同時燃焼、都市固形廃棄物焼却、燃え尽き、元素区分、臭素、ダイオキシン、混合ハロゲン化ダイオキシン

E+Eプラスティック廃棄物の熱処理
J. Vehlow, B. Bergfeldt, K. Jay, H. Seifert, T. Wanke, F.E. Mark*
Forschungszentrum Karlsruhe GmbH, Institut fur Technische Chemie
Karlsruhe, Germany
* Dow Europe, Horgen, Switzerland
要約
同時燃焼試験で最大12重量%の種々の電気電子(E+E)プラスティック廃棄物が試験用焼却炉内の処理済み都市固形廃棄物(MSW:municipal solid waste)に追加された。発熱量が増加し、底の灰の燃え尽きが良くなった。生ガス内のポリ塩化ジベンゾPダイオキシンおよびジベンゾフランのレベルは、同時燃焼で大きく変化することはなかった。臭素(Br)の量が多くても生ガス内の臭素含有ダイオキシンおよびフランの濃度は限られ、排出物質の質を低下させることはない。したがって、一定の限られたE+E廃棄物に対してMSW焼却は有利な処分方法である。金属成分は、焼却の前に慎重に分離しなければならない。

はじめに
電気電子(E+E)廃棄物のプラスティック破片の処分は、いろいろなフォーラムで話題になっている。材料リサイクル、化学製品リサイクル、エネルギー回収をはじめとするさまざまな廃棄物管理方法が評価中である。プラスティックに蓄えられたエネルギーを回収する手段としての都市固形廃棄物焼却(MSWC)は、将来有望な選択肢と思われる。現在の研究(ENEA 1995)では、おもにカドミウム、銅、鉛、アンチモンなどの重金属やハロゲン臭素および塩素で考えられる悪影響に重点をおいている。こうした難燃剤に関係する化合物や元素が塩素化(PCDD/PCDF)、臭素化(PBDD/PBDF)、または混合ハロゲン化(PXDD/PXDF)ジベンゾPダイオキシンおよびジベンゾフランなどの有機微小汚染物質の生成に及ぼしてきたかもしれない影響も、議論の多い課題である。記録に残っている運転実績が不足しているのと、臭素含有物質に関する作動要素と調整要素の知識が限られているため、試験用焼却炉で同時燃焼実験をするための研究プログラムが、Forschungszentrum Karlsruhe(FZK)と、欧州プラスティック製造業協会(APME:Association of Plas-tics Manufacturers in Europe)傘下のプロジェクトグループによって始められた。焼却試験プロジェクトの目標は、以下の物質が火格子燃焼システムの総合的な燃焼運転制御や大気排出物に与える影響を調査することにあった。
最悪ケースをシミュレーションするための、一般的な家庭ごみを投入するときの比較的濃度の高いE+E廃棄プラスティック
E+E製品であるための投入材料内の高濃度の揮発性重金属
ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDPE)、ビフェニル(PBB)、テトラブロムビフェノールA(TBBA)などの難燃剤に関係する有機化合物のほか、臭素、塩素、リンなどの活性元素

試験用焼却炉TAMARA
図1に示すKarlsruheの試験用焼却炉TAMARA [Merz & Vogg 1989] は、大形燃焼装置の1つで、あらかじめ調整したおもに破砕済み廃棄物を1時間に250kg処理する能力がある。TAMARAには往復する火格子が取り付けてあり、可変のルーフエレメントを取り付けることによって燃焼室を元の逆流構成から並行流構成に変更できる設計になっている。試験は、並行流構成と中央流構成を使用して行われた。E+E材料は、別の材料投入システムによって直接投入シュートに加えられた。
排気筒ガスの脱じんは、約200℃で働くファブリックフィルタで行なう。排気筒ガスのクリーニングのため、2段洗浄システムが実装されている。ファブリックフィルタの上流には等速サンプリングトレインが設置されている。ガス段階の代表サンプルのほかに、生ガスの中の微粒子の代表サンプルを採取するためである。その他の固体流は、代表サンプリング、副サンプリング、およびサンプル前処理のために慎重にサンプリングした。塩素化ダイオキシンおよびフランのサンプリングと分析はFZKによって行われた。また同時に2つのドイツの民間分析試験所、GfA(Gesellschaft fur Arbeitsplatz-und Umweltanalytik mbH, Munster )およびITU(Institut fur Technische Untersuchungen, Berlin )でも行われた。
図1: 試験用焼却炉TAMARAの系統図
TAMARAは、全体的な流れ、温度、圧力などをすべて記録するため各種のモニタリングシステムを備えている。生ガス内の主なガス成分は、オンラインでモニタされる。酸化ジルコニウム電極による酸素、分光器または電気化学的手法による二酸化炭素、一酸化炭素、塩化水素、二酸化硫黄、一酸化窒素、二酸化窒素、および水などである。

材料のカテゴリ
E+E廃棄物のカテゴリに関する情報が乏しく、また品物の種別や廃棄物の個々の量についてほとんどわかっていないため、代表的な試験材料を得るためにE+E廃棄物は大規模な商用運転をしているところから入手した。前処理は、以下の会社が商用運転方法の範囲内で行った。:
IUTA 消費者向け(小形器具、厨房機器、パソコン、テレビなど, ...) EGR 商用/小規模工業用(中サイズ部品、パソコン、ファックス機など, ...) SCHLESWAG 工業用(電気機器筐体、交換機、メインフレームなど, ...)
それぞれ約1 Mgの破片が同時燃焼実験のために提供された。これらのサンプルは、1992年〜1994年の間にドイツでサンプリングされた大量のE+E廃棄物(消費者向けタイプから1,400 Mg、商用タイプから144 Mg、工業用タイプの60 Mg)から準備された[Vehlow & Mark 1997].
表1: 現在のE+E装置の各種プラスティック材料の割合
Plastic
Share in %
Plastic
Share in %
PS
29
PU
6
ABS
16
PPO
3
PP
11
PMMA
2
PA
8
epoxies
2
PVC
8
POM
1
PC
7
silicones
1
PET/PBT
6
 
 
将来のE+E廃棄物廃棄プラスティックに関する情報を得るため、現在7 のヨーロッパのE+E装置に見られる平均ポリマ混合物を、APMEのメンバが供給したプラスティック材料を混合してシミュレーションした。現在と将来のヨーロッパ市場で予想される全体的な組成は、SOFRES報告書[Sof-res 1995] と非常によく一致する。表1に示す。

無機混合物
都市固形廃棄物で一般的に見つかるのよりもE+Eプラスティックの中の方が濃度が高いと分析された元素の一部を表2に示す。こうした元素がどうなるかが燃焼試験では大きな関心である。難燃剤に関連する元素の塩素、臭素、およびアンチモンの量が増すことが予想されていた。とくに工業用材料で予想された高濃度の金属種(銅、鉛など)が確認された。
表2:
中央流キャンペーンでの低発熱量H1(単位はMJ/Kg)と廃棄物質の中から選択した元素の濃度(単位はmg/Kg、消費者向けデータは並行流キャンペーンから)
 
basic fuel
consumer
commercial
industrial
new material
HI
8.8
35
32
25.5
35
P
2080
250
2600
8100
1200
Cl
6150
3895
10990
1865
38550
Cu
112
1900
82
77500
137
Zn
430
620
1540
4720
292
Br
34
4290
15000
5750
8600
Cd
9
240
123
29
41
Sn
24
85
63
1230
18
Sb
26
2000
1950
2200
2630
Pb
600
146
96
1880
1890

有機混合物
難燃化のためにE+E材料で使用される有機化合物の分析は、難しい作業である。第一に、その目的に使用される具体的な化合物については限られた情報しかない。第二に、混合プラスティック内のそうした種に対するクリーンアップと分析のための方法が標準化されていない。さらに、プラスティック化合物に使用されている元の化合物の中には、混合作業の際や、E+E製品の寿命を通してさらに反応が可能なものもある。

そのため、消費者向け、商用、および工業用材料の分析の試験所間での比較がドイツの2つの認定済み試験所、GfAとITUとの間で始められた。分析結果の検討は、3つのクラスの難燃化化合物、つまりPBB、PBDPE、およびTBBAに限定されていた。量的な結果の精度は、溶剤抽出法などのサンプル前処理方法が両方の試験所で違っていたことを考慮すれば満足できる。校正は、該当するクラスの化合物の自然にある同種のものの溶液を使用して行われた。PBBレベルは、工業用材料を除くすべてのサンプルで検出限度未満であった。工業用材料では、50 mg/Kgの一般的な濃度が測定された。PBDPEは、3つのサンプルすべてで検出され、そのレベルは100〜200 mg/Kgの範囲であった。すべてのサンプルで見つかったTBBAの量は、100〜6,000 mg/Kgの範囲であった。

分析された難燃剤は、各種のE+Eプラスティックで直接分析された臭素含有量の5〜50%を占めるに過ぎなかった。理由の1つには、難燃化に他の化合物が使用されていたことがある。

輸送および取扱いに対するドイツの法令(ドイツ危険物質規制:German Regulations for Hazardous Materials)と材料の市場への出荷に対する法令(ドイツ化学物質禁止法:German Chemicals Banning Ordinance)で規制されているもう1つのクラスの有機微粒汚染物質が、塩素化および臭素化ダイオキシンおよびフランである。どちらの法令も、2、3、7、および8-TCDDなどの単一の同種、および17の塩素化された同種と8つの臭素化された同種の総量に対する限度を設定している。ハロゲン化された同種を混合した場合の限度は規定されていない。

特別なプログラムで、APMEはTAMARAのサンプルのほかに市場に出ている多数の製品の分析も計画していた。要約すると、ハロゲン化ダイオキシンおよびフランの濃度は相当変動する。平均値はおおよそ20μg/Kgで、ドイツの規制に適合する。プログラムでもう1つわかったことは、選択した8つのPBDD/PBDFのグループに属する臭素化された同種の量が、17の塩素化された同種の同等のグループよりも多いことであった。

古くて寿命が来ている一部のE+E機器のハロゲン化ダイオキシンおよびフランの合計レベルは、調査した機器のような物品からプラスティック材料をリサイクルするときには、工業部門での保健衛生の見地から十分に注意して調べなければならないことを示している。焼却、ガス化、熱分解などの方法による処理では、こうした化合物が完全に分解することを保証し、そのエネルギーを回収する。

試験プログラム
試験プログラムは、約2週間にわたって実施した。1日にそれぞれ4時間の試験を2回づつ行い、各試験は4時間続いた。週の最初と最後の日には、基本燃料だけを燃焼させて2回の基準試験を行った。第1週の試験では、燃焼室は並行流構成、第2週は中央流構成の運転を使用した。燃焼温度は、第1週は約900℃、第2週は約930℃に保たれた。同時に投入した材料は、商用および工業用材料の場合は、3、6、および12重量%、新規材料の場合は6および12重量%、消費者向け材料の場合は3重量%とした。表3に試験プログラムの概要を示す。
表3:試験プログラムの概要
code
E&E fraction
addition in wt-%
combustion geometry
T in ℃
ref.1.1
0
parallel
 
ref.1.2
0
parallel
894
cons.3%
consumer
3
parallel
900
comm.3%
commercial
3
parallel
912
ind.3%
industry
3
parallel
901
ind.6%
industry
6
parallel
893
ref.2.1
0
parallel
892
ref.2.2
0
parallel
 
ref.3.1
0
central
930
ref.3.2
0
central
912
n.mat.6%
new material formulation
6
central
923
n.mat.12%
new material formulation
12
central
949
comm.6%
commercial
6
central
926
comm.12%
commeacial
12
central
937
ind.12%
industry
12
central
932
ref.4.1
0
central
939

結果の検討
燃焼効率
実験を評価するのに重要なデータをいくつか表4に示す。表には、臭素の供給量と、E+E廃棄プラスティックの追加量が増えるのとともに増加する投入燃料の発熱量を示す。燃焼温度、酸素と一酸化炭素のレベル、および塩化水素と臭化水素の生ガスレベルも示す。
表4
すべての試験実施の標準条件での臭素供給量、投入燃料の低発熱量H1、燃焼室内の温度生ガス内の酸素、一酸化炭素、塩化水素、および臭化水素の濃度。
 
Br in mg/Kg
Hl in KJ/Kg
T in ℃
O2 in vol.%
CO in mg/m3
HCI in mg/m3
HBr in mg/m3
ref.1.1
59
6770
918
9.4
1.7
760
3
ref.1.2
67
6960
894
9.7
1.2
730
3
cons.3%
270
7950
900
9.9
1.7
680
9
comm.3%
1979
7910
912
9.9
2.1
900
204
ind.3%
606
7960
901
10.0
1.7
840
72
ind.6%
1193
8480
893
10.4
3.6
850
131
ref.2.1
68
7440
892
9.9
1.2
750
3
ref.2.2
71
7168
906
9.4
1.1
770
4
ref.3.1
57
8880
930
10.0
0.0
790
4
ref.3.2
45
8770
912
10.3
0.1
760
3
n.mat.6%
757
10580
923
10.5
1.8
870
63
n.mat.12%
1650
12440
949
10.5
0.0
1010
119
comm.6%
1297
10260
926
10.5
0.1
860
157
comm.12%
2735
12760
937
10.9
0.2
940
292
ind.12%
1000
10840
932
10.6
0.3
800
141
ref.4.1
38
8840
939
9.9
0.3
670
4
表は、E+E材料を加えても燃焼特性が悪影響を受けていないことを示している。燃焼室内の温度、生ガス内の酸素と一酸化炭素のレベルは、すへての試験でほぼ一定レベルに保たれている。

ただし、プラスティック材料の発熱量が増加することによって、消費者から出た後の混合プラスティック廃棄物の同時燃焼ですでに経験しているように[Vehlow et al. 1994]、燃料ベッド温度が変化している。追加されたプラスティックは容易に発火する。そのため、プラスティック同時燃焼の場合の燃料ベッドの最高温度は、基準燃料だけが燃焼している場合よりも火格子の前端に近い。燃料の具体的な発熱値は、プラスティックを同時燃焼したときより高くなり、そのため燃料ベッド内の局部的なエネルギー密度も高くなった。このため、燃料の発熱量の増加によって燃料ベッドの最高温度が高くなった。
図2: 基準試験および2回の同時燃焼試験の場合の燃焼室構成が燃料ベッドの温度へ与える影響

燃焼室の構成によって燃料ベッドの温度分布にはっきりした違いが見られた。並行流構成では、天井から燃料ベッドに反射する熱放射が多い。中央流構成の場合よりもベッド最高温度が高く、火格子にそってベッドの材料の温度が下がるのが遅い。図2では、両方の構成での基準試験の場合の燃料ベッド温度分布と、それぞれの構成での1回の同時燃焼試験で発熱量が増加したときの影響を示している。

燃料ベッドの温度が上昇することによって、図3でわかるように、すべての同時燃焼実験で火格子灰の燃え尽きが良くなっている。火格子の後端での温度が高いため、並行流試験では効果がもっとはっきりしている。生ガス内の燃え残りは、どの試験でも非常に少ない(一酸化炭素は5 mg/m3未満、フライアッシュ内のTOCは7 ppm未満)。生ガスのパラメータもフライアッシュの成分も、燃焼室の構成が違ってもまったく影響がない。

図3: 火格子の灰の中のTOCと投入燃料の発熱量
生ガスサンプルでは、E+E材料で分析された臭素化難燃剤の痕跡を検出できなかった。廃棄物焼却プラントの分解能力が高いことがよく知られているのを見込んでいたのでこの結果は予測されていた[Rittmeyer et al. 1994]。同じことは、純粋に臭素化されたダイオキシンとフランに対しても言うことができる。1回の基準試験で3重量%の商用材料を加えたときにフランの痕跡がわずかに検出されただけである。

投入量が少なく、分析でのエラーや、燃焼プロセスで残った元素と燃焼後に合成された元素との区別ができないという事実のため、分解される量を定量的に算出することは難しい。E+Eプラスティック廃棄物からのPXDD/PXDFの平均投入量を約2μg/Kg、この破片の塊りの流れを15kg/hと推定すると、この材料からのPXDD/PXDFの総投入量は約30μg/Kgである。一般的な家庭ごみのPCDD/PCDFの量は約2〜6μg/Kg [IAWG 1997] であり、これをTAMARAの基準燃料に使用する。基準燃料を100〜150Kg/hで処理すると、PCDD/PCDFの投入量は約500μg/hになる。

TAMARAの生ガス内のPXDD/PXDFの平均レベル(図8を参照)は約50 ng/m3であり、この区画内の出力合計は、約45μg/hになる。火格子とボイラの灰の中のPXDD/PXDFを考慮せず、また新しく合成されるのを一切無視すれば、廃棄物焼却プラントのPXDD/PXDFについては、最低分解効率を90%以上と推定できる。これは、研究論文[Vehlow & Vogg 1991, IAWG 1997] の他の評価に一致する。

元素の区分
E+E廃棄物を追加すると、その材料によって、ハロゲン塩素および臭素の濃度のほかに、連続投入される材料の中の一部の重金属(アンチモン、銅、鉛)が実質的にいくらか増加する。難燃剤に関連する塩素、臭素、およびアンチモンについて簡単に説明する。

分析した塩素濃度は、約6,000〜12,000 ppmの間で変化する。これらの入力数をいろいろな区画で分析した出力と比較した結果をパーセントで区分して図4に示す。塩素のデータはばらつきが大きく、平均出力は投入量よりも10から20%高い。別々にサンプリングした投入材料、とくに有機廃棄物の破片やE+Eプラスティックが分解する際に塩素が減った可能性が非常に高い。ただし、分析した投入量と出力に基づくこの種のバランスに対しては、結果は非常に満足である。

塩素の総インベントリの約70〜80%はガス段階にある。生ガス内のそれぞれの塩化水素濃度は、670〜1,010 mg/m3の範囲である(表4で比較)。データをよく調べると、2つの試験キャンペーンで得られた区分に大きな違いがある。最初の試験キャンペーンでは、火格子灰に留まっている残留塩素は2回目のキャンペーンより少なく、フライアッシュが運ぶ塩素のインベントリは多い。どちらの影響も、燃焼室の構成の違いにさかのぼることができる。最初のキャンペーンの並行流構成では燃料ベッドの温度が高いので、ベッド材料からの塩素の放出が促進された。さらに、この構成では燃料ガスが高温になっている時間が中央流構成と同じように長い。そのため、微粒子内で大量の塩化物になる脱じん筒ガス内の酸性塩化水素によって中和されるアルカリ性フライアッシュが多くなる。

図4: 塩素のパーセント区分
燃焼室の構成の影響は、フライアッシュの臭素の量で簡単に確認できる。図5は、両方の燃焼室構成について、分析した出力流内の臭素の総量を分析した臭素投入量と対比させてプロットしたものを示す。ここでも、臭素バランスはどちらも十分に一致していると言える。グラフは、並行流同時燃焼試験への臭素の投入量が増えるとともにフライアッシュに取り込まれる臭素が明らかに増えることを示している。塩化水素に比べて臭素化水素の酸度が高いため、効果は塩素よりも臭素に対しての方が大きい。投入量が大きくなると、フライアッシュ内で可能なアルカリ度が限られているためにカーブは水平になる。

中央流試験では、E+E廃棄物とともに大量の臭素が追加されたとしても、フライアッシュに吸着される臭素は非常に少ない。これは、酸性ガスと微粒子が高温で残留する時間が短くなることで容易に説明できる。

火格子灰で見つかる臭素のレベルは、燃焼室構成の影響による上記の説明と一致しない。分析エラーはまったく考えにくく、また火格子灰の中での基本的なアルカリ度の変化などその他の潜在的パラメータは実験データでは確認できない。


図5: 臭素の区分(左は並行流燃焼構成、右は中央流燃焼構成)
代表的な重金属バランスの例として亜鉛のパーセント区分を図6に示す。データの変動はハロゲンの場合よりも大きいが、このバランスの一致は十分と言える。ばらつきは、銅や鉛などの金属の場合によりはっきりしており、こうした金属は、E+E廃棄物内で純金属として見つかることが多い。目に見える量の銅線や回路基板の金属残留物を含む工業用材料の同時燃焼では、火格子ふるいで純金属が見つかった。この悪影響を避けるため、E+E廃棄物材料の金属はよく取り除いおくとよい。


図6: 亜鉛のパーセント区分
E+E材料の難燃特性に関係する元素で重要なのは、臭素を主体とする難燃剤の副添加剤として使用されるアンチモンである。手始めに、臭素とアンチモンとの分子比を2〜4と想定できる。図7は、すべての試験でわかったアンチモンのパーセントバランスを集めたものである。プラスティック片の投入量分析に誤りがあったことがほぼ間違いない2つの試験を除いて、バランスは非常によく似ている。

両方の揮発性元素の区分は、廃棄物燃焼で一般的に見つかるそうした元素の様子と違っていなかった[IAWG 1997]。これは、こうした元素の投入量が大幅に増加したとしても、焼却の際のそれら元素の結果が大きく変わらないことを示している。


図7: アンチモンのパーセント区分
生ガス内のPCDD/PCDF
の以前の実験では、たとえ塩素の量が5倍に増えても、PCDD/Fの生成への影響はなかった[Vehlow et al. 1994]。これは、ドイツのフルスケールでのMSW焼却炉での類似の試験と[Ker-ber 1994]、廃棄物焼却でのPVCとPCDD/Fとの関係に関して最近発表された研究結果で裏付けられている[Rigo et al. 1995]。ある論文では、難燃剤としてポリ臭素化ジフェニルエーテルを含む電子廃棄物をMSWCで同時燃焼させるとPCDD/Fが増えると主張している[Lahl et al. 1991]。これは、難燃化処理されたXPSおよびPURフォームのTAMARAでの同時燃焼試験では確認できなかった[Vehlow & Mark 1995]。

図8: 生ガス内のPCDD/PCDFレベルの総量
すべてのE+E同時燃焼試験でFZK、GfA、およびITUが分析した生ガス内のPCDDとPCDFの濃度に大きな違いはなかった。図8には平均データを集めてあり、同族体の総量を連続投入される材料の中の臭素レベルの関数で表している。1つの同族体に対する検出限度は、常に0.1 ng/m3の単位である。データは、一般的なばらつきを示している。難燃処理されたE+E材料の同時燃焼による同族体の大幅な増加や変化はわからなかった。
生ガス内のダイオキシンとフランを含む臭素
この状況は、臭素含有同族体に関する限り変化する。論文や上記で引用したTAMARAの試験によれば、臭素化および混合ハロゲン化化合物によってMSWCのPCDD/PCDFのレベルはわずかに増える[Dumler et al. 1989, Oberg & Bergstrom 1990, Vehlow & Mark 1995].

臭素を含有するダイオキシンとフランの排気筒ガス濃度データは、純粋に塩素化された同族体の濃度より精度が低いことに注意する必要がある。サンプリング、クリーンアップ、および分析手順を考慮すると、経験のある試験所が実施するPCDD/PCDFの排気筒ガス分析には、約±20%の標準エラーがある。このレベルは、臭素含有同族体には期待できない。それは、異性体の数が非常に多いこと、標準化されたクリーンアップ手順がないこと、もっとも重要な異性体の標準が用意されていないこと、また最後にとくに排気筒ガス内の濃度が低いことによる。 E+E同時燃焼実験の際に、臭素含有同族体のサンプリング、クリーンアップ、および分析が、異なるサンプリング列とクリーンアップ手順を使用して、GfAとITUによって実施された。それぞれの生ガス濃度は、ほとんどすべてのケースで50%未満の差があった。単一の同族体の検出限度は、0.1〜0.3 ng/m3の単位であった。したがって、得られた結果では、各種パラメータの間で正確な関係を確立することはできないが、基礎的な化学知識と組み合わせれば、ハロゲン化ダイオキシンおよびフランの生成を制御するもっとも可能性のあるメカニズムに光を当てるのには使用できる。

図9: 生ガス内のダイオキシン(左)とフラン(右)を含む臭素
生ガス内の臭素含有ダイオキシンおよびフランで測定した濃度をすべてまとめて図9に示す。実質的には、純粋に臭素化された同族体(PBrDD/PBrDF)は検出されなかった。分析された同族体で多いのは、臭素原子を1個持つ同族体であった。臭素原子が2個ある同族体が検出されたのは、大量の臭素が追加され、3個以上の臭素原子を持つ同族体を検出できなかった場合だけである。臭素含有フランは、ダイオキシンの場合よりも多く生成されていた。

図10: ダイオキシンとフランを含む臭素と供給された臭素との対比
臭素含有フランの生成は、臭素の投入量が増えるのとともに増加し、臭素の量が多くなると一定になるようである(図10を比較)。影響は、ダイオキシンの場合ははっきりしないが、濃度は非常に低い。こうした結果は、上記で引用したフォーム同時燃焼試験の結果と一致する。

図11のグラフは、こうした試験での臭素含有フランが、純粋に塩素化された臭素の10倍に達していることを示している。これは、12重量%の商用または工業用E+E材料を同時燃焼させた2回の試験で観察されている。ダイオキシンの濃度は、フランの濃度よりも常に3から4倍低く、該当するハロゲン化化合物の総量は実質的には増えなかった。

すべての試験で、生ガス内のダイオキシン/フランの総量は、TARAMAの他の実験でわかった一般的な運転範囲を超えることはなかった。この範囲は図11の背景で示され、約20〜100 ng/m3の間である。排気筒ガスの後から採取されたサンプルはチャコールフィルタを通るので、残留PCDD/Fの濃度は0.001 ng/m3未満になる。臭素含有同族体は検出できなかった。これは、臭素化種が係っていても、最新のMSW焼却プラントの排出に関しては問題がないことを示している。

図11: ハロゲン化ダイオキシンおよびフランの総量

結論
種々のE+Eプラスティック廃棄物とMSWの同時燃焼試験をKarlsruheの試験用焼却炉TAMARAで行い、最新のMSW焼却器での運転と排出への影響を調査した。最大で12重量%のE+E材料を基本燃料に追加した。その結果、以下のデータが得られた。:
高レベル(最大12重量%)のE+Eプラスティック材料を基本燃料に追加しても燃焼プロセスに悪影響はなかった。
発熱量が多くなると、底にある灰の燃え尽きが促進される。残留有機化合物(とくに燃えていない難燃剤を示す)は、排気筒ガス内では検出できなかった。
投入される材料の中の塩素のレベルに大きな変化はなかった。難燃処理のための元素(臭素とアンチモン)のレベルだけでなく多数の重金属が、E+E廃棄物を追加することで大幅に増加した。一部の金属、とくに銅と鉛は金属状態で存在し、火格子にそって移動している傾向がある。そのため、焼却の前にE+E材料から金属をよく分離しておくことが強く求められる。
塩素と臭素のレベルが増加しても、生ガス内のPCDDとPCDFの濃度が大きく上昇することはなかった。
限定量の臭素化および塩素化ダイオキシンおよびフランの生成が見られ、フランはダイオキシンの3〜4倍であった。どちらの分類の化合物の場合も、おもに1個の臭素原子を持つ同族体が検出された。
E+Eプラスティック廃棄物の投入量が増えると、臭素含有同族体によってダイオキシンとフランの総量が最大で50%増加する。得られたデータは、TAMARAの一般的な運転範囲に一致する。
一部の同時燃焼試験の際に採取した空気のサンプルでは、PCDD/PCDFの濃度は0.001 ng/m3未満であった。活性化された炭素によって生ガス内の中濃度から低濃度のPXDD/PXDFを無視できるレベルまで効果的に除去できることを示している。
同時燃焼実験では、投入される廃棄物内のE+Eの割合が増えても、廃棄物焼却の特性に悪影響を与えていない。増加が予想された臭素含有ジベンゾPダイオキシンおよびジベンゾフランの生成は、高い割合でE+Eプラスティック廃棄物を追加しても適度に安定していた。フルスケールの焼却プラントでは、高発熱量の廃棄物片の同時投入は最悪ケースで3〜5%に制限される。そうした場合、ダイオキシンとフランが増加しても、そうした焼却プラントで一般的なPCDD/Fレベルの範囲内に留まるはずである。

勧告
ここで示された結果によれば、限られた量の特定のE+Eプラスティック廃棄物であれば、MSW焼却は自然環境の面でも受け入れられ、経済的にも確実な処分方法であると断言してもよさそうである。ただし、金属内容物は、ほとんどのリサイクル作業で現在行われているように削減すべきである。火格子のメンテナンスを減らし、火格子ふるいの中の金属の種類をできるだけ少なくするためである。

謝辞
このプロジェクトは、以下の団体の支援を受けて行われた。欧州プラスティック製造業者協会(APME:Association of Plastics Manufacturers in Europe)、臭素化難燃剤工業パネル(BFRIP:Brominated Flame Retardant Industry Panle)、EBFRIP(ヨーロッパでの同等の団体)、ヨーロッパ難燃剤協会(EFRA:European Flame Retardant association)、FIEE(Federation Francaise des Industries Electriques et Electronics)、FZK(Forschungszentrum Karlsruhe)、ZVEI(Zentralverband der Elektro- und Elektronikindustric)。

プログラムは、さまざまな企業の多数の人たちの協力を得て実行された。H. Geisert 、H. Gramling 、R. Hartel 、H. Reis, R. Siegel (FZK)、A. Jean (Elf Atochem)、J.M. Falguiere (Du Pont)、R. Martin (APME)、W. Pauli (ABB)、M. de Poortere (EBFRIP/BFRIP/EFRA)、M. Rohr (Bayer)。こうしたあらゆる協力に深く感謝する。

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