デカブロモジフェニルエーテル(c-Deca BDE)ユーザーとそのサプライチェーン業界の皆様へ


日本難燃剤協会
環境委員会
ハロゲン部会
デカブロモジフェニルエーテル(c-Deca BDE)用途調査について(第2報)
(POPs関連の状況説明)


 拝啓 貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は当協会の活動にご理解・ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
 先日はc-Deca BDE(商業用デカブロモジフェニルエーテル)の用途調査にご協力いただき誠にありがとうございました。
 前回もご説明いたしましたとおり、現状のPOPs提案書(ドラフト2)のままPOPs締約国会議で議論されますと、c-Octa BDE(商業用オクタブロモジフェニルエーテル)に含有されているHexa-BDE、Hepta-BDE、Octa-BDE、及びNona-BDEがPOPs条約で指定される可能性が高いと判断されます。条約において指定されれば、過去の例を踏まえれば、化審法においてこれらの物質が第1種特定化学物質に指定される事になると予想されます。その結果、これらの物質のうちOcta-BDEとNona-BDEを含むc-DecaBDEも製造・使用ができなくなります。
 どうしても代替品による対応が不可能な用途(エッセンシャルユース)があるという事業者がおられましたら、9月25日までにご連絡いただきたくお願い申し上げます。

 ただし、現在の条約上で認められているエッセンシャルユースは、代替が困難であり、かつ、生命の危険に関するもの(マラリアの駆除)等社会経済的に相当の理由があるものだけです。
 このため、エッセンシャルユースをご連絡された場合には、社会経済的影響(コストや社会的に影響する具体的な内容)とともに、現在の環境排出状況(マテリアルバランス)、今後の対策も問われることが予想されますことをご了承の程お願い申し上げます。

 以下にPOPs指定に関しまして補足説明させて頂きます。尚、詳細は末尾の[*詳細補足説明]をご覧下さい。

1) 脱臭素化による低臭素化体への変位についての科学的な反論
今回の提案書(ドラフト2)ではc-Octa BDEの構成成分そのものだけでなく、蓄積性の無いOcta BDE(臭素数8)が蓄積性の高いPenta BDE(臭素数 5)への脱臭素化が起こるかどうかが議論されております。ドラフトには脱臭素化についての研究論文がいくつか発表になっておりますがこれが科学的に妥当かどうかを検証するために、現在当協会としては世界的な臭素難燃剤メーカーの団体であるBSEF(臭素・科学・環境フォーラム)の知見・コメントを待っている状況です。
2) c-Deca BDEの純度アップ
Deca BDE(臭素数10)につきましては今回POPs指定の議論の対象とはなっておりません。しかし現在の技術では、不純物として存在するOcta BDEとNona BDEのない純度100%(あるいはそれに近い)のDeca BDE を達成することは難しいと考えられます。
3) エッセンシャルユースの有無
代替品による対応が困難な場合には、エッセンシャルユース(代替不能な不可欠用途)があるかないかを詳細に調査させていただきます。これは、サプライチェーンに於けるエンドユーザーまで調べる必要が有ります。

何れに致しましても、c-Deca BDEのユーザー様のみならずこれを使用した製品のユーザー様にも大きく関係することですので、ご一読頂き、まずは、原則として代替品による対応を検討いただくとともに、どうしても不可能な場合には当協会に理由とともにご連絡の程宜しくお願い申し上げます。

以上

〔*詳細補足説明〕

<POPsとは>
環境中への残留性の高い化学物質の削減や廃絶に向けた国際条約「残留性汚染物質に関するストックホルム条約 (POPs条約)」に基くものです。
POPs(Persistent Organic Pollutants : 残留性汚染物質)とは環境中での残留性・生体蓄積性・人又は環境毒性があり、長距離を移動し他の地域の環境にも影響を及ぼす物質のことです。

<c-Octa BDEのPOPs対象>
今回POPs条約に提案されているc-Octa BDEは臭素数6〜9のBDEの混合物です。臭素数6〜9のBDEは残留性に違いがあると考えられており、臭素数8と9のBDEについて残留性は確認されておりません。
しかし、 最新の提案書の中で臭素化BDEは或る条件下で脱臭素化し、より残留性の高い低臭素化BDEになる記載されています。
なおc-Octa BDEは既に日・米・欧では業界が自主的に製造・輸入・販売を中止しております。

<なぜc-Octa BDEのPOPs指定によってc-Deca BDEが規制されるのか?>
c-Octa BDEの構成物質がPOPsとなった場合、日本の化審法ではこれら構成物質である臭素数6〜9の4種類のBDEが第1種特定化学物質に指定されます。この場合、意図的・非意図的に係わらず臭素数6〜9のBDEを含む製品は製造・輸入・販売・使用が原則として禁止されることになります。

現在市販されているデカブロモジフェニルエーテル(c-Deca BDE)は1-3%程度のNona BDE(臭素数 9)と極微量のOcta BDE (臭素数 8)を不純物として含んでおります。
このためDeca BDEに問題は無くとも、その不純物によって化審法上、製造・輸入・販売・使用が原則として禁止されます。

<今後想定される事態>
c-Octa BDEの構成成分がPOPsに指定されるかどうか現時点では確定しておりません。しかし想定される事態は下記の通りとなります。

A. 2008年10月のPOPs条約に関する国際技術検討委員会(POPRC4)で、c-OctaBDEの構成成分をPOPsに指定する提案が可決され、POPs締約国会議にc-Octa BDEの構成成分をPOPsに指定するように勧告
B. 2009年5月開催のPOPs締約国会議でc-Octa BDE構成成分のPOPs指定が決定
C. 早ければ2009年10月よりc-Octa BDEの構成成分が第1種特定化学物質に指定され、その結果としてOcta・Nona-BDEを含むc-Deca BDEの製造・輸入・販売・使用も禁止

上記の事態に至るまでにc-Deca BDEのユーザーの皆様から現行のご用途の詳細な情報が不可欠です。

<第1種特定化学物質とは>
現在、PCB等16物質指定されています。
難分解性、高蓄積性及び長期毒性又は高次捕食動物への慢性毒性を有する化学物質
措置の内容としては、製造又は輸入の許可、使用の制限、政令指定製品の輸入制限、物質指定等の際の回収等措置命令等が規定されています。原則、製造・輸入・使用が禁止されています。

<日本難燃剤協会の対応>
日本難燃剤協会ではBSEF(臭素科学環境フォーラム)と協調し、c-Octa BDEの再提案内容(特に脱臭素化)に対するコメントを提出しつつ、c-Deca BDEの有用性を守るために経済産業省・他の業界団体・ユーザーと密接に連絡を保ちながらPOPs問題に対応していく所存です。本件に関する情報は適宜、皆様に対し発信申し上げます。

本件に関するお問い合わせ・ご質問は日本難燃剤協会までお問い合わせ下さい。

日本難燃剤協会
事務局
TEL 03-3517-2232
FAX 03-3517-2560
E-mail: info@frcj.jp


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