難燃剤はプラスチック、ゴム、木材、繊維等の高分子有機材料を難燃化するために広く使用され、火災による人的・経済的損失を防止するのに大きく貢献している。
 社会の発展と技術の高度化に伴い、特に電気・電子機器の使用が益々増大すると予測すると予測される。これらの電気・電子機器は潜在的に回路の短絡、劣化等による発火の危険性を有しており、これらの筐体等に使用される高分子有機材料に対する難燃性の要求は益々厳しくなると予測される。
 この多岐にわたる要求に対応するためには種々の難燃剤が開発されている。

 難燃剤はその構成成分、使用法により下記のように大別される。
1)構成成分による分類
 有機難燃剤 ハロゲン系
リン系
その他(複合型等)
 無機系難燃剤 金属水酸化物
アンチモン系
その他(赤リン系を含む)
2)使用法による分類
 添加型難燃剤 有機系
無機系
 反応型難燃剤 ビニル基含有系
エポキシ基含有系
水酸基含有系
カルボン酸含有系
その他

難燃剤は難燃性が要求される下記の高分子有機材料に広く用いられている。
1)熱可塑性樹脂
A)ABS B)ポリスチレン C)ポリプロピレン
D)ポリエチレン E)ABS/PCアロイ F)飽和ポリエステル(PET等)
G)変性PPE / 変性PPO H)ポリアミド(ナイロン6、66等) I )ポリカーボネート(PC)
J )スーパーエンジニアリングプラスチックス K)塩化ビニール
2)熱硬化性樹脂
A)エポキシ B)フェノール樹脂  
C)不飽和ポリエステル D)ウレタン  
3)ゴム,繊維,壁紙,接着剤,その他
4)木材

1)高分子有機材料の燃焼
 A)可燃性ガスの燃焼:可燃性ガス、酸素の補給
 B)燃焼による輻射熱の発生:有機材料表面の温度上昇
 C)有機材料中への熱伝導:有機材料の温度上昇
 D)有機材料の熱分解:可燃性ガスの発生
 E)可燃性ガスの材料表面への拡散:有機材料中の拡散
 F)可燃性ガスの燃焼場への拡散:気相中の拡散
  A)→B)→C)→D)→E)→F)→A)のサイクルのように燃焼が継続する。
従って、燃焼を止めるためには、このサイクルが継続しないようにすればよい難燃剤はこのサイクルの1つ以上に作用するものである。

2)各種難燃剤の難燃化機構
 難燃剤の種類により、その難燃化の機構が異なる。代表的難燃剤の種類による。一般的な難燃化機構を下記に示す。
気相系
1)ハロゲン化合物、ハロゲン化合物と酸化アンチモン
   ラジカルトラップ効果による、活性OHラジカルの安定化 酸素遮断効果
a)
RX
R・ + ・X : ハロゲン
・X + RX
R・ + HX
HX + ・H
H2 + ・X
HX + ・OH
H2O + ・X
b)
Sb2O3 + 2HX
2SbOX + H2O
5SbOX
Sb4O52 + SbX3
4Sb4O52
5Sb3O4X + SbX3
3Sb3O4
4Sb2O3 + SbX3
2) リン酸によるラジカルトラップ
リン化合物
H3PO4
HPO2 + PO + etc.
H + PO
HPO
H + HPO
H2 + PO
・ OH + PO
HPO + O
3) 脱水吸熱反応
難燃剤の脱水反応によ吸熱効果と、発生する水蒸気による燃焼成分の希釈
a) 金属水酸化物
2Al ( OH )3
Al2O3 + H2O
Mg ( OH )2
MgO + H2O

固相系   
1) 赤燐
赤燐の酸化、水分との結合による縮合リン酸の生成、チャーおよびチャーと断熱層の生成促進効果と安定化効果

2) リン化合物
リン化合物の酸化によるリン酸→メタリン酸→ポリメタリン酸の生成、チャーおよびチャーと断熱層の生成促進効果と安定化効果

3) リン化合物+N含有化合物による発泡チャーの生成・断熱・酸素断熱効果

4) リンとハロゲンの相乗効果
気相で効果のあるハロゲンと固相で効果のあるリンがすぐれた効果を示す。
ハロゲン化リンとオキシハライドが生成し、ラジカルトラップ効果を示す。

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