安全な難燃剤の需要を満たすために
−臭素科学・環境フォーラム(BSEF)からの最新情報−
Dead Sea Bromine Group 研究開発部門担当副社長
ミカエル・シュピーゲルシュタイン博士


紹介
ミカエル・シュピーゲルシュタイン博士は、イスラエルにあるDead Sea Bromine Groupの研究開発部門(R&D)担当の副社長である。

ミカエル・シュピーゲルシュタイン博士は、エルサレムのヘブライ大学で、生物科学を専攻し、1965年に卒業、1969年に博士号を取得した。博士過程終了後、ニューヨーク州立大学および南カリフォルニア大学で研究を重ねた後、イスラエル生物学研究所(Israel Institute for Biological Research)の薬理学・毒物学部門で研究者としてのキャリアを歩み始めた。研究所においては、コリン作用性システムにおける薬理学、毒物学、および生理学において、数多くの研究プロジェクトを成し遂げ、数年間部門長として勤務した。1983年、シュピーゲルシュタイン博士は、化学部門の役員の地位に昇進し、後に、専属毒物学・薬理学研究所であるイスラエル生命科学研究所(Life Science Research Israel)の所長となった。

1991年、Dead Sea Bromine Groupに加盟し、衛生安全環境局(Health, Safety and Environment)の副局長となり、世界中で規制活動などを行い、マーケティングおよび製品開発を支援している。現在、シュピーゲルシュタイン博士は、研究開発部門担当の副社長、イスラエルのベールシェバに拠点を置いている。

要約
2001年は、欧州連合(EU)にとって科学的根拠に基づく難燃剤政策のスターティングポイントと見ることができる。臭素を含むという理由だけで難燃剤を禁止するという提案は、EUの3機関すべてに却下された。段階的禁止は、2種類の臭素系難燃剤であるPBBとペンタBDEに限定されたが、これはEUのリスクアセスメントの結果に一致したものである。オクタDBEとデカDBEに関する決定は、EUのリスクアセスメントに従うことになろう。EUはまた、パーソナル・コンピュータのエコ表示の基準を満たしていれば、PBBとPBDEを除くすべての臭素系難燃剤の使用を認める決定を下した。同時に、臭素系難燃剤についての間違った主張や誤った噂が広がっている。このような主張は、確認されていない科学的プロトコル、ペンタBDEにのみ関係する証拠、あるいは単なる無知に基づいていることが多い。深刻な懸念について新たな証拠が提示されることがまれにあるが、この場合でもBSEFの科学プログラムは、独自の科学的調査を始める。BSEFは、このような間違った主張が、漸次、健全な科学的根拠に基づくものに代わると確信している。

安全な難燃剤の需要を満たすために

−臭素科学・科学フォーラム(BSEF)からの最新情報−
我々は12カ月前に、臭素系難燃剤と電気・電子機器に対する欧州連合(EU)のアプローチだけでなく、EUの化学物質対策という広い観点で問題を提起し、話し合った。特に、リスクアセスメントが終わっていないいくつかの物質について規制案が作成されていることが強く懸念された。

その後、EUリスクアセスメントの結果は法律制定の最善の基盤であり、無視できないことを認識するという法規面での重要な進展がみられた。このような展開は、詳細試験で具体的用途の安全性が確認された化学物質のみ使用を継続すべきだとする欧州内の化学物質政策(化学戦略)の動きと共に、BSEFには非常に心強いものである。また、臭素系難燃剤の科学的解明に努力してきたBSEFのアプローチを裏付けるものと感じている。

本日は、リスク評価、法規面の動き、リサイクル性の研究について私の前の講演者が紹介された様々な情報を総合比較し、これらの問題に関するBSEFの今後の取り組みについて述べたい。

臭素系難燃剤についての懸念が初めて表明されて以後科学は進歩し、それらの物性が正確に解明されている。状況を整理するために、この問題の経緯を振り返ってみよう。この問題は、1990年代初めに科学者が環境や母乳中に75種類のペンタ臭化ジフェニルエーテル(BDE)の1つである臭素系難燃剤の成分が含まれていることを発見したことから始まった。しかも、この難燃剤は発泡剤に使われたもので、電気電子業界で使われたものではなかった。この発見は、化学界、環境団体、公的機関、そして臭素業界自身に強い懸念を引き起こした。

母乳中のペンタBDE成分の検出は科学的にどう解釈すれば良いのだろうか。その後、環境中のペンタBDEの検出はプラスチック成分として使われたことが原因ではなく、鉱山や石油掘削で用いる水圧装置の作動液として利用するときに放出されてきたことに由来するらしいことが明らかになった。確かに、ドイツ政府は欧州リスクアセスメント当局に対し、1985年から1987年にかけて採鉱作業にペンタBDEを環境中に放出する装置を使用したことを正式に確認した。この結論は、1990年代初めにこのような利用方法を中止したことと、その後で環境中のペンタBDE濃度が低下したことの間に相関がみられたことに基づいて導かれた。de BoerとAllchinのモニター調査から、環境中のペンタBDE濃度は1990年代以降低下している。母乳に含まれるペンタBDEについては、10年前から母乳に含まれる汚染物質をモニターしてきたスウェーデンの科学者によるフォローアップ調査で、ペンタBDE濃度はこの2年間に30%も低下したと報告されている。環境中にペンタBDEが初めて検出されたときの反応は様々であった。多くの研究者はペンタBDE検出の事実を正確に理解しようとしたが、この発見がすべての臭素系難燃剤に対する不安を巻き起こしたとも報告されている。この不安は、EUリスクアセスメントのために実施した研究でデカBDEからペンタBDEやテトラBDEへの減成(脱ブロム)がないことが実証されたこととは関係ない。BSEFでは、政治家や環境団体との対話、会議、メディアでの公開討論や独自の科学的研究を通じて、このような虚説を打破すべく努力している。

EUの規制に関する討論ではどんな結果になったのだろうか。環境中にペンタBDEが検出されたことで、欧州各国政府はこの問題を認識し、一部の臭素系難燃剤に関連する健康と環境面の不安を解決するための指令案が提案された。最初のEUの指令ではすべての臭素系難燃剤が対象となったが、科学の進歩を基に、現在は、ポリ臭素化ビフェニル類(PBB)とペンタBDEだけを対象にし、デカBDEおよびオクタBDEについての決定は、現在EUリスクアセスメントの結果に基づくことが決定されている。

現在作成中のEU指令案についてはDr. SchunurerとMrs. Pereniusが詳しく解説されたが、私もこれを簡単に紹介し、指令が臭素系難燃剤の使用に与える影響について考察したい。臭素業界はこの問題についてEUの協調的な対応を強く歓迎していることを最初に申し上げたい。昨年1年だけでも、北欧の1〜2カ国が根拠のない不安をもとに、EUリスクアセスメントを無視して独自の規制を導入する瀬戸際までいくという事態となった。危険物質指令案(RoHS)は、各EU加盟国が物質禁止令を独自に導入することを妨げることに成功した。デカBDEとオクタBDEについての今後の決定はEUの科学的リスクアセスメントと連携させることになり、非常に歓迎している。

水中の有害物質についての個別のEU指令案に目を向けると、EUの指令案制定者がリスクアセスメントの原則を忠実に守り、臭素系難燃剤の中からペンタBDEだけを有害物質としていることも好感される。従って、デカBDEやテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)などの物質は、水中の有害物質と認識されていない。

ペンタBDEに関するEUリスクアセスメントが終わり、環境中にペンタBDEが拡散している状況とその生体蓄積と有毒性からリスク低減手段が必要であるとの結論が導かれたことをふまえ、EU指令案ではペンタBDEの段階的廃止を進めている。ペンタBDE指令の対象を拡げてデカBDEとオクタBDEも廃止しようという欧州議会の修正案は、閣僚会議において満場一致で否決された。EUでは、閣僚会議と欧州議会の両方が参加する共同決定プロセスで合意に達した結果、環境法が制定された。欧州議会だけで物質の全面的利用禁止を義務づける権限がないため、メディアを通じた声明とは逆に、規制はペンタBDEに限定されている。BSEFは、最終指令がデカBDEとオクタBDEのEUリスクアセスメントに基づくものになると確信している。

以上要約すると、現在我々が直面している法的措置のなかで、規制に関する議論が3種類のPBDEだけに集中し、最終決定はこれらの物質のリスク評価に委ねられてきたといえる。ペンタBDEのリスクアセスメントによりリスク低減措置が要求されたことから、ペンタBDEの使用の段階的廃止を義務づける指令案が作られた。デカBDEとオクタBDEのリスクアセスメントは間もなく終了するが、これについては後で詳しく考察する。

欧州のもうひとつの指令案として、北東大西洋と北海の水環境を保護するOSPAR条約が提案された。BSEFは、特定の環境圧力団体がユーザー業界や企業に圧力をかけて臭素系難燃剤の使用を止めさせるために「臭素系難燃剤」という分類を不当に利用していると考えている。このような圧力自体は非難さるべきものであり(これらの環境団体は非臭素技術による代替物質が環境に与える影響や臭素系難燃剤使用廃止が、消費者の防災性に与える悪影響を全く評価しようとしていない)、OSPAR条約が75 種類の臭素系難燃剤の放出禁止をめざしているとするのも正しくない。OSPAR条約が対象とする臭素系難燃剤は、PBB、ペンタBDE、オクタBDE、デカBDE、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)及びTBBPAの数種類だけであることが、今年初めて文書で確認された。さらに、OSPARは、これらの化学物質に対するEUリスクアセスメントを最大限考慮することを再度言明した。つまり、EUリスクアセスメントはOSPARにとっても重要な基準となる。BSEFは、EUリスクアセスメントと製品管理プログラムによる業界主導の製品排出規制を組み合わせることで、特定難燃剤の海中流入に関する不安が解消されると確信している。

さらに、昨年、欧州ではエコラベルの規準に関する重要な進展があった。EUレベルでのエコラベル規準は、臭素系難燃剤の利用自体を排除していない。PCと携帯用コンピュータに関して最近修正された「EUエコフラワー」規準では、主要難燃剤のTBBPAを含む大部分の臭素系難燃剤が利用できるようになった。すなわち、EU市場ではTBBPAを含むPCにEU エコフラワーを付けて発売できるようになった。この決定により、コンピュータに高度なリサイクル性と防火(耐火)規格を指定できるようになり、臭素系難燃剤が環境にもたらす利益が確認されたことを意味する。臭素系難燃剤は、火災の発生を抑制することで、結果的に環境中への放出を低減する。

次に、様々な研究プログラムのお陰で臭素系難燃剤について集めた知識を皆様に紹介したい。現在実施されているEUリスクアセスメントは、これらの製品がライフサイクルを通じて環境と健康に与える影響を最も総合的に評価するプロセスである。業界は、担当行政官にすべての情報を提供することでこのプロセスに全面的に協力している。


電気・電子機器産業にとって最も重要な2種類の物質:デカBDEとTBBPAのリスク評価に絞って考察しよう。最終調査が2001年末に終了するため、デカBDEの最終結果が間もなく発表される(最新情報によれば11月中に終了予定)

TBBPAはプリント回路基板に使われている難燃剤であるが、リスクアセスメントは2001年4月に最初の「既存データの提出」段階が終了し、最初のリスク評価報告書案が2002年春に提出が予定されている。すべての終了期限の設定には時期尚早である。このプロセスの質と精度は、すべての関係者の協力に依存している。すなわち、川下ユーザーもTBBPAのデータ、特に放出データを提供することでこのプロセスに重要な役割を果たし、これについては、例えば、欧州プラスチック製造者協会(APME)のエポキシ樹脂グループとの協力がすでに始まっている。

リスク評価プロセスはEUの新たな化学物質政策(THE WHITE PAPER ON THE EU CHEMICALS POLICY)の大幅な見直しの一環として実施されている。このイニシアティブは人の健康と安全を守り、環境保護を目的に3万種類以上の化学物質の見直しを計画している。この新しい政策は、製品登録前にメーカー自身が製品の安全性を立証することを義務づけているため、ビジネス展開に大幅な変更を求めるという意味で化学産業にとっても大きな挑戦である。すなわち、人の健康と安全性を守り、環境に無害であることを立証するデータを業界が提供しないと製品登録ができない。

しかし、この政策は川下ユーザーにとっても大きな課題である。欧州では、製品のメーカーと輸入業者も製品の安全性に責任を負うことになり、追加試験の実施とそのコスト負担が必要となる。

先に述べたように、臭素系難燃剤業界は幅広いデータを収集し、この新しい化学政策への対応を準備している。さらに、最近発売された臭素系難燃剤の作業は既に終了し、登録前に徹底的アセスメントを実施して認可を取得した。

BSEFのサイエンス・プログラムは規制義務に対応するのみならず、科学研究が提起する科学的疑問に答えることを目的としている。臭素系難燃剤に関する深刻な懸念が生じた場合、業界はいつでも細心の注意を払って調査を実施し、その原因、人体や環境に与える影響を解明し、その影響を抑える措置を講じる努力をしている。例えば、昨年、オランダで卵中に微量のHBCDが検出された。BSEFは、HBCDに対する既存の製品管理プログラムに加え、HBCDが環境に与える影響をより正確に評価する2年間の研究をオランダ漁業研究所(Dutch Fisheries Institute)のJacob de Boerに委託した。

より広い面では、周到なサイエンスプログラムを定義し、毎年更新している。このプログラムは5つの研究分野からなる。

- EUリスクアセスメントを裏付ける試験(デカBDE、TBBPA、HBCD)
- 消費者の(臭素系難燃剤)曝露
- エンドオブライフの研究
- ライフサイクル評価
- 環境中のPBDEやその他臭素系難燃剤のモニター
研究は、国際的に認知された専門家が独立した形で実施している。米国科学アカデミー、ドイツのフレゼニウス研究所、エルランゲン大学、スウェーデン国立試験所、それと上記のオランダ漁業研究所である。これらの研究のお陰で、臭素系難燃剤は最も詳しく解明されている難燃剤であり、今や非常に詳しいデータが収集されている。しかし、このプロセスは今も続いている。

HBCDを例にとると、業界全体および個々のBSEF加盟企業の両方で、製品管理プログラムが実施されている。製品管理のコンセプトは、国際的な「環境・安全・健康に対する配慮プログラム」の一環で、特定製品の利用とライフサイクルの各段階での影響を防止するために臭素系難燃剤メーカーとその川下ユーザーとの協力に依存している。

臭素業界は、科学という枠を超え、様々な利害関係者との対話を行い、情報を提供し、彼らの懸念に耳を傾けることにより、経済や社会の様々な構成者との関係を築いてきた。我々は、環境グループからの圧力の高まりに直面するB&Qやマークス・アンド・スペンサーなどの英国の小売店に対応するイニシアティブを実践し、製品の必要情報を提供した。このイニシアティブは、川下リーダーがインフォームド・デシジョンを行い、カストマーからのあらゆる質問に答えられるようにすることを目的としている。また、環境NGO(非政府組織)との手紙をやりとりや話し合いも実施している。臭素系難燃剤についての間違った情報が流布しているため、BSEFは、この対話は必要なプロセスであると考え、これらの物質と、それが健康、安全、環境に及ぼす影響を人々に正確に理解してもらうためには、臭素系難燃剤に関する最大量の最も正確な情報提供が任務であると考えている。

確かに、臭素系難燃剤について良く耳にする意見は単なる憶測や間違った情報であることが多い。このような意見はいくつかの臭素系難燃剤についての不安を引き起こしているが、臭素系難燃剤は電気電子機器部門だけで使用されているのではなく、性質も性能特性も全く異なる75種類の物質の総称である。本日は、この機会を借りて、臭素系難燃剤について最も多い意見を説明したい。

プラスチックに添加された臭素系難燃剤は、機器の使用中に消費者の健康に害を及ぼす量が放出されると非難されることがある。しかし、ドイツ連邦環境省が委託した調査では、利用機器からのデカBDEの残留放出量は無視できる値であった。EUリスクアセスメントも、最終製品の使用中に放出されるオクタBDEとデカBDEの量は、人の健康や環境に有意な影響は及ぼさないと結論している。現在リスクアセスメントの対象となっている他の臭素系難燃剤、例えば、TBBPAおよびHBCD、についても同じ結果が予想される。臭素系難燃剤が電気電子機器ユーザーにもたらす安全面の利益は、主張されているリスクを上回ることを念頭に入れなければならない。つまり、TV受信機、コンピュータ、その他電気電子機器等の臭素系難燃剤を含む機器は、安全に利用できることを考慮しなければならない。

電気電子機器解体業者の血液中に微量のデカBDEが検出されたことから、リサイクル業者の健康が脅かされると非難されている。しかし、検出された量はきわめて微量で、デカBDEの毒性は非常に低い。労働者の安全を保証するため、デカBDEのEUリスクアセスメントではこれを詳しく調べ、血液サンプル中の検出濃度は健康に害を及ぼすと推測される濃度の2万分の1でしかないという結論を出した。他のリサイクル工場での調査でも、適切な健康・安全策を実施すればこのような労働者の曝露事故は発生しないだろうと指摘している。
臭素含有プラスチックのケミカルリサイクル技術は国内では全く検討されていないのが実状です。先ほども触れましたが、家電リサイクル法の再商品化率が80〜90%に引上げられた場合対象4品目中の30%を占めるプラスチックの再商品化が最大の課題となり、この中に臭素含有プラスチックが含まれています。臭素含有プラスチックは家電4品目のテレビとパソコン、複写機等に使用されており、これらの対象樹脂量は約24万トン存在します。この中でマテリアルリサイクルに適さない部分を環境負荷を少なくリサイクルする手法を開発しておく事が必要になると考えます。

大きな2番目の課題は経済性を考慮したリサイクル体系の構築です。ここでは欧州プラスチック製造者協会(APME)が検討した欧州の容器包装プラスチックに関するEco‐efficiencyの結果について紹介します。この手法は経済性と環境負荷の両面から望ましい方向を検討するものです。この図は現在欧州の容器包装で埋立に廻されている部分70%をサーマルリサイクル又はマテリアル・ケミカルリサイクルに全量置換えた時のケーススタディーを行った結果です。マテリアルとケミカルリサイクルの割合を現状より増やして行くと環境負荷が殆ど変化しない割に経済性が急激に悪化する事が読み取れます。リサイクルの中でエネルギー回収が経済的に有利である事を暗示しています。この関係の理解を容易にする為、プラスチック部品の形態による分解のし易さを比較してみます。大きな単一の部品は簡単に分解出来ると共に再生が容易な為マテリアルリサイクルに適しますが、小型部品や積層品等は分解に大変なエネルギーを必要とします。この様な部品はケミカル・サーマルリサイクルに向けるのが適しています。日本では容器包装リサイクル法ではマテリアル・ケミカル・指定された特定のサーマルが再商品化の対象として認められています。家電リサイクル法・資源有効利用促進法のパソコンについてはマテリアルリサイクルまでしか認められていません。競争力ある社会を形成する為にも経済性を考え、ケミカル・サーマルリサイクルまで含めた法体系に軌道修正する必要があると考えます。

さて、臭素含有のプラスチックをリサイクルする上で環境負荷を小さく抑える可能性の高い実用化技術を次に列挙してみます。サーマルリサイクルとしては、最近自治体での採用が増えたガス化溶融炉が、ケミカルリサイクルとしてはEUPの二段ガス化プロセス・川崎製鉄のサーモセレクトが挙げられます。ここではサーモセレクトのダイオキシン分解能力を食品と比較して示しました。適切な処理プロセスを通すと環境負荷は大幅に削減出来る事がわかります。





現在実施中のリサイクル実験について
最後に当協会が臭素含有プラスチックの処理に関する基礎実験を始めた事とこの基礎実験を実証試験に発展させる為、関係者の情報交換の場をスタートさせた事を紹介致します。

先ほど環境負荷を小さく抑える可能性のある実用化技術をいくつか紹介致しましたが、この中の川崎製鉄Xサーモセレクトをモデルとした小型の設備を用い典型的なモデルサンプルを使っての基礎実験と稼働したばかりの家電リサイクル工場から排出されるプラスチック処理状況の調査を今年度の日本自転車振興会の補助事業として実施中です。



この設備は低温(700℃前後)でのガス化炉と高温(1150℃前後)での高温保持炉からなり、試料は低温ガス化炉の上から投入しガス化されたガスを分析する計画で実験中です。この基礎実験と家電リサイクル工場から出るプラスチックの実態を踏まえ実用化レベルでの実証実験へ展開していく必要があります。この為、経済的で環境安全性に配慮したリサイクルをどの様に行っていくべきかを難燃性プラスチックに関係する業界・企業と議論し、ベクトルを合わせる為の情報交換会を発足させました。この会を通じて環境負荷が小さくなる事を証明する実証実験が行われ、将来の法律改正が望ましい姿になる様、関係者が連携して広報活動を続けて行ける様にしたいものです。このセミナーに参加された皆様方にも是非このような活動に理解を賜り、これを機会に協力関係が拡大できればと期待しております。

以上


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