BSEF Japan
最近情報に見る環境情報の研究(1)
2002.3.15掲載


環境省から臭素系難燃剤および臭素化ダイオキシン類に関する調査報告が相次いで発表されている。今回はそれらを取り上げて研究をしてみよう。

そもそも、環境省による公的な研究・実状調査は、1999年11月に成立した『ダイオキシン類対策特別措置法』の附則第2条に始まる。「政府は、臭素系ダイオキシンにつき、人の健康に対する影響の程度、その発生過程等に関する調査研究を推進し、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。2.ダイオキシン類に係わる規制のあり方については、この法律の目的を踏まえつつ、その時点において到達されている水準の科学的知見に基づき検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるものとする。3.ダイオキシン類に係わる健康被害の状況及び食品への蓄積の状況を勘案して、その対策については、科学的知見に基づき検討が加えられ、その結果に基づき、必要な措置が講ぜられるものとする。この法律に基づいて、

1)特定施設(工業用の電気炉等、廃棄物焼却炉その他の施設)からの排出基準が決められた。焼却施設の場合は、以下。他に工業施設の場合も基準設定(最高0.1ng-TEQ/m3N)
焼却施設のダイオキシン濃度規制
燃焼室の大きさ
新規施設の場合
既存施設
(〜98.11)
(02.11〜)
(02.12〜)
4t/hour
0.1
基準適用猶予
80
1
2-4t/h.
1
5
-2t/h.
5
10
単位:TEQ ng/m3N
条件:800℃の燃焼、2秒以上の滞留、200℃以下の急速冷却(排ガス)

2)耐用一日摂取量
ダイオキシン類を人が生涯にわたって継続的に摂取したとしても健康に影響を及ぼす恐れがない一日あたりの摂取量で、TEQ 4pg/day/kgとされた。

3)環境基準
媒体
基準値
備考
大気
0.6pg-TEQ/m3以下 1.基準値は2,3,7,8-TCDDの毒性等価係数を使用
2.大気及び水質の基準は年間平均
3.土壌の場合は、250pg-TEQ/g以上の場合は再調査
水質
1pg-TEQ/L以下
土壌
1000pg-TEQ/g以下

研究1. 『平成12年度臭素系ダイオキシン類に関する調査結果』

2002年度には、臭素系ダイオキシン類が発生している可能性がある臭素系難燃剤製造施設や家電製品製造施設などで排ガス中の濃度を調査する。また未知の発生源を把握するため、全国24ヶ所で環境モニタリングを実施する計画(2001.9.12化学工業日報より)が発表されている。これに先立ち、『平成12年度臭素系ダイオキシン類に関する調査結果』が、昨年末報告された。この調査の目的は、発生源と推定される地点の近傍で臭素系ダイオキシン類汚染実態についてパイロット調査を行うことにより、臭素系ダイオキシン類の人の健康や生態系への影響に関する調査研究を推進するための基礎資料を得ることにあった。



との背景が想定され、調査媒体としては、大気、降下ばいじん、土壌、地下水、水質、底質、水生生物(魚介類)、野生生物(鳥類、ほ乳類)及び食事資料の9媒体の調査が行われた。

その結果は、下表のようにまとめられる。
但し、ここでは、環境省も利用しているTEF,TEQを利用し、さらに塩素化ダイオキシンの毒性等価係数が、塩素⇒臭素の場合も全く同等であると仮定している。すなわち2,3,7,8-TCDD=1=2,3,7,8-TBDDのようにして計算をした。

ここから推察できることは、環境基準との対比で
1) 大気は、PCDD/DFsは、焼却場付近での最大値で環境基準0.6pg/m3を超えているが、monoB-PCDD/DFs及びPBDD/DFsは、検出限界以下か最大で0.08と報告されている。
2) 水質は、臭素系ダイオキシン類が発見されなかったので、調査が中断された。
3) 土壌の環境基準(1000pg/g)に対し、どの値(TEQ)もそれを超えてはいない。特にPBDD/DFsは、検出限界以下か最大で2と報告されている。
4) 環境省の報告をまとめると、
 
測定の結果より
コメント
(塩素化)
ダイオキシン類
焼却場付近
大気では最大値で環境をオーバー土壌では、環境基準以下
水質は、monoB-PCDDFsや臭素化DXNが検出されなかった為、塩素化Dxnを調査せず。
monoB-PCDD/DFs 焼却場付近、人口集中都市地域では、大気・煤塵・土壌。底質及び食事試料で発見されている。 但し【最大】の上記との比較で
大気:1.7%(焼却場)4.2%(都市)
土壌:3.9%(焼却場)0.6%(都市)
底質:1.8%(焼却場)0.4%(都市)
臭素化
ダイオキシン類
焼却場付近の土壌・底質及び都市部の底質で発見されているが、大気・降下煤塵・地下水・水質・水生生物・野生生物及び全地域の食事試料からは発見されていない。 但し【最大】の塩素化DXNとの比較で、
土壌:0.3%(焼却場)
底質:1.7%(焼却場)
0.1%以下(都市)
環境省のコメント 1)今回の予備的な調査では、3種類のダイオキシン類は問題となるレベルではない。
2)但し、臭素化DXNsに関しては、検出限界が高かったので次回はもっと工夫の要
3)食事試料に関しては、統計処理の結果、指針の4pg(TEQ)/kg/dayに比較し、5つのサンプル対比で7.0、10,11,74,114%と報告している。
とされている。
今年度予定されている『臭素系ダイオキシン類総合調査』を予測するために、上記調査をさらに加工、以下のような仮定をおいて推論すると、
1)検出限界以下のものを、おのおのの検出限界値の1/2の『量』検出される。
2)さらに検出された各々のダイオキシン類のTEQが以下であるとするとした場合にされることは、次図のようになる。
ダイオキシン/フラン類
同属体中最強
TEF
固体別説明
臭素/塩素化 MonoB-TrCDDs
1
MonoB-TeCDDs
1
MonoB-PeCDDs
0.1
MonoB-HxCDDs
0.01
MonoB-HpCDDs
MonoB-TrCDDs
0.0001
0.1
MonoB-TeCDFs
0.05
臭素化 2,3,7,8-TeBDD
1
1,2,3,7,8-PeBDD
1
1,2,3,7,8,9/1,2,3,7,
8,9-HxBDD
0.1
1,2,3,7,8,9-HxBDD
0.1
2,3,7,8,-TeBDF
0.1
1,2,3,7,8-PeBDF
0.05
2,3,4,7,8-PeBDF
0.5
1,2,3,4,7,8-BDF
0.1


MonoB-PCDD/DFsは、ほぼ実測と同等。
PBDD/DFsは、最悪でも0.1pg/m3レベルで問題とはならない。
おおむね、塩素系の半分以下といえる。


土壌の場合も最悪予想でも問題となるレベルではないと考えられる。
最終的には、環境省の本調査の結果を待つべきとは考えるが、
予備調査からは上記のように推察することができる。

2.平成12年度非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査結果
世界で約10万種、我が国で約5万種流通していると言われる化学物質の中には、人の健康及び生態系に対する有害性を持つものが多数存在しており、これらは環境汚染を通じて人の健康や生態系に好ましくない影響を与えるおそれがある。こうした影響を未然に防止するためには、潜在的に人の健康や生態系に有害な影響を及ぼす可能性のある化学物質が、大気、水質、土壌等の環境媒体を経由して環境の保全上の支障を生じさせるおそれ(環境リスク)について定量的な評価を行い、その結果に基づき適切な環境リスクの低減対策を進めていく必要がある。環境省では、このような化学物質の環境リスク評価の本格的な実施に向け、その方法論の確立を目的とする環境リスク評価のパイロット事業を、平成9年度から12年度にかけて行ってきた。
環境リスク評価には、多数の化学物質の中から相対的に環境リスクが高そうな物質をスクリーニングするための「初期評価」と、次の段階で化学物質の有害性及び暴露に関する知見を充実させて評価を行い、環境リスクの低減方策等を検討するための「詳細評価」がある。本パイロット事業で行ったのはこの「初期評価」に当たるものであり、具体的には39物質を対象として、国内外の既存文献より得られた知見に基づき環境リスクの評価を行った。


臭素系難燃剤(TBBPA=テトラブロモビスフェノ−ルA)も調査対象とされたが、
ヒトの健康評価で『リスクの判定不能』、生態で『作業不要』とされた。


本件に関する問い合わせは、m-tokuse@bsef-japan.com


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