主要難燃剤解説
三酸化アンチモン(ATO)

特徴・要約
白色結晶性粉末です。化審法I-543 CAS# 1309-64-4, EINECS# 215-175-0,
 三酸化アンチモン(以下、ATO、硫化鉱石である輝安鉱や金属アンチモンの溶融酸化、あるいは酸化鉱及び粗製ATOの再揮発工程によって製造されます。
 ATOは、原鉱石に由来する鉛とヒ素を不純物として含みます。鉛はアンチモン酸鉛として、ヒ素はATOの結晶格子内アンチモン原子を置換した状態で存在します。従って、これらの不純物は水に容易に溶解する状態では存在しません。
ATOは、一般に、重量で0.1%未満の鉛とヒ素を含みます。
用途
ATOは、以下の用途に使用されます。
1 プラスチック、塗料、接着剤、シーラント、ゴム、繊維のバックコート用の難燃助剤で、塩素または臭素の化合物と併用されます。
2 ポリエステル製造時の重合触媒及び各種合成用酸化触媒原料。
3 自動車のブレーキパッド・ライニング用摩擦助剤。
4 光学レンズや蛍光灯・ブラウン管用のガラス清澄剤。
5 酸化チタン顔料、クロム酸塩とモリブデン酸塩系顔料の安定剤。
6

鋳造槽や空引き琺瑯加工における乳白剤に用いられる。


安全性情報:詳細については、製品安全データシート(MSDS)をご参照ください。
[有害性分類]

急性毒性物質、その他の有害性物質
LD50(経口、ラット);>20,000mg/kg
経口摂取で毒性があるとは考えられません。

[人影響情報]

日本産業衛生学会「第2群B」;人間に対して恐らく発癌性があると考えられるが、証拠が比較的に十分でない物質に分類されています。
ACGIH(米産業衛生専門家会議);取り扱い及び使用面では癌原性分類されていません。

[環境影響情報]

生物濃縮性は中程度と考えられます。
欧州では、環境の影響に対していかなる分類、ラベリングも必要としません。

[特定の危険有害性] 通常の取り扱いでは、特に危険性はありません。
[主要な徴候] 「毒物及び劇物取締法」の劇物であり、目、鼻、喉あるいは皮膚に刺激性があり、かぶれる場合があります。

利点

ATOは、ハロゲン系難燃剤の難燃効果を高め、その難燃剤の添加量を最小に出来ます。
ATOの相乗効果がないと、法律で要求される難燃性の水準を得るのに必要なハロゲン化合物の量は約2倍になります。従って、ハロゲン系難燃剤へのATOの添加はコストを削減すると共に物性を改良することにもなります。

論点
[特別な注目の理由]

 吸入塵埃中にATOの可能性がある場合、欧州危険物質指令67/548/ECに基づき塵埃吸入により発癌性分類”カテゴリー3”、国際がん研究機関(IARC)では“グループB”とランクされています。
 但し、マスターバッチあるいはペレットの形態は制限を受けず、そのような有害性あるいはリスク警句・ラベルを要求されません。

[欧州既存化学物質リスク評価優先物質]

 2000年10月25日第四次優先リストに指定され、リスク評価管理下にあります。
 第一次ドラフトは2004年に公表され、2004年末あるいは2005年に第一回目の審議が実施される予定となっています。
 ATOは、環境の影響に対しては如何なる分類、ラベリングも必要としません。その事由としては、ATOの溶解度(1.86mg/l)は環境毒性(>2.4mg/l、海藻)より低く、従って急性毒性の分類(R50-53)は必要としません。この点は欧州リスクアセスメント評価過程で合意されています。

[各国あるいは国際的な動き]
自主的なエコラベルによる規制以外は、世界中何処にもATOを難燃助剤として使用することに規制はありません。
[曝露許容濃度]

日本産業衛生学会(1999年度版):0.1mg/m3(Sb及びSb化合物に対してSbとして)
 ACGIH(2002年度版):0.5mg/m3(Sb化合物及びATOの取り扱い及び使用に対して時間加重平均TLV-TWA Sbとして)

供給会社/出典 他
日本難燃剤協会(FRCJ)
〒103-0027 東京都中央区日本橋2-16-3 18山京ビル3階
TEL:03-3517-2232 FAX:03-3517-2560
E-mail:info@frcj.jp / URL: http://www.frcj.jp

アンチモン化合物系難燃助剤の供給を行っている日本難燃剤協会のメンバー
(株)鈴裕化学

〒302-0110 茨城県守谷市百合ヶ丘1-2420
TEL:0297-48-1575 FAX:0297-48-1579
http://www.chemical-suzuhiro.co.jp

日産化学工業(株)

〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-7-1 興和一橋ビル
TEL:03-3296-8070 FAX:03-3296-8360
http://www.nissanchem.co.jp

日本精鉱(株)

〒162-0822 東京都新宿区下宮比町3-2
TEL:03-3235-0031 FAX:03-3235-0034
http://www.nihonseiko.co.jp

山中産業(株) 三国製錬事業所

〒532-0001 大阪市淀川区十八条1-13-50
TEL:06-6399-5331 FAX:06-6399-5336

※注意
 この難燃剤解説は、欧州難燃剤協会(EFRA)作成のFlame Retardant Fact Sheetをベースに、現時点で入手できる知見を基に日本難燃剤協会が作成しています。この難燃剤データ表は、健康・環境・規制情報等を提供することを目的にしておりますが、製品安全データシート(MSDS)・法的な要求文書等ではなく、また記載データは製品規格を示すものではありません。

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