主要難燃剤解説
赤リン

特徴・要約
 赤リンは基本元素であるリンで構成された非晶質高分子形です。
基本元素であるリンは容易に酸化されます。この高い反応性が有害性特性を示す結果となります。
しかしながら赤リンは黄リンと比べて、反応性が低く、毒性についても低いです。(別表参照)
赤リンの構造式ですが、ポリマー状であることから、単一的な分子式で表示することができません。
以下の構造はそれぞれのリン原子が他の3つのリン原子へどのように結合形成されているかを図解するための一例です。

応用
赤リンはポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイソシアネートやエポキシ樹脂のようなポリマーには単独添加により難燃効果を示します。ポリオレフィン、スチレンやゴムようなポリマー中には発泡剤や炭化剤と組み合わせて併用します。
赤リンの通常添加量は2から10%です。

安全性情報
健康:
赤リンは哺乳類に対して急性毒性は低いです。例えば経口によるラットのLD50は20,000mg/kg以上です。さらに、赤リンは難燃剤として適用する場合には、空気中の水分や酸素と反応することがないように、赤リン自身を樹脂や金属酸化物で被覆して安定化します。これにより樹脂との相溶性や耐湿性に良い効果をもたらします。

環境:
最近の毒物学上の研究で、魚、ミジンコおよび藻類に対して10〜100 mg/Lの範囲の中での水生毒性について明らかになりました。
環境中で、赤リンは、加水分解によりホスフィンとリン酸を発生してゆっくりと分解していきます。
中間生成物のホスフィンは有毒ですが、ホスフィンの反応活性は高いので、すぐに酸化されます。最終生成物は無害なリン酸塩になります。廃水中の赤リンはほとんどが下水汚泥への吸着によって除去されます。
失火あるいは廃棄物焼却場では、リンは酸化され、リン酸化物になります。リン酸化物は高い焼却技術による排ガス処理システムで確実に除去されるか、あるいは釜残の中にポリリン酸あるいはリン酸塩として残り、処理されます。

利点
赤リンはリン含有量が高いので、少量の添加で高難燃化できる効果的な難燃剤です。
赤リンはポリマーの機械的物性に影響しません。また、電気的物性(例えばCTI)についても維持し、さらには向上する場合もあります。
被覆赤リンは熱的安定性が賦与されているので、約300℃までの加工条件に耐えることができます。
赤リンは極めて低毒性であり、燃焼時の発煙量も低いです。(ガスの毒性から考えても赤リンから発生するホスフィンなどのガスよりも樹脂固有から発生する有毒ガスの毒性の方が高いです。)
赤リンはその難燃効果により大きな火災を防ぐことができるので、人類や建物に対する火災の危険性から守ることができます。
作用形態:
赤リンの難燃作用は、脱水炭化作用とラジカルトラップ作用による二作用の和として難燃効果を示します。それらは一般的にプラスチックのような高い酸素含量樹脂に対し効果的であります。赤リンは脱水作用によりリン酸にかわり、さらにポリリン酸を生成して、燃焼している物質の表面に被覆チャー層を形成して難燃効果を現します。

論点
難燃剤の環境面での特性に関する研究では、GEPA(Umweltbundersam, 2001)において、赤リンは使用に問題なしという分類に指定されています。

供給会社/出典 他
日本難燃剤協会(FRCJ)
〒103-0027 東京都中央区日本橋2-16-3 18山京ビル3階
TEL:03-3517-2232 FAX:03-3517-2560
E-mail:info@frcj.jp / URL: http://www.frcj.jp

赤リン系難燃剤の供給を行っている日本難燃剤協会のメンバー
燐化学工業(株)
〒105-0014
東京都港区芝2-5-10 芝公園NDビル 5F
TEL:03-5446-2839 FAX:03-5446-5571
URL: http://www.rinka.co.jp/
日本化学工業(株)
〒136-8515 東京都江東区亀戸9-11-1
TEL:03-3636-8102 FAX:03-3636-8117
URL: http://www.nippon-chem.co.jp/
※注意
 この難燃剤解説は、欧州難燃剤協会(EFRA)作成のFlame Retardant Fact Sheetをベースに、現時点で入手できる知見を基に日本難燃剤協会が作成しています。この難燃剤データ表は、健康・環境・規制情報等を提供することを目的にしておりますが、製品安全データシート(MSDS)・法的な要求文書等ではなく、また記載データは製品規格を示すものではありません。

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